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大坂Vに思う「日本人」とは

宮家邦彦の 

  orld atch

 

 テニスの全豪オープン女子シングルス決勝を、

テレビをつけたり消したりしながら見ていた。

 

筆者が見始めるとなぜか大坂なおみ選手が劣勢に

なるからだ。心配で見ていられずテレビを消すと、

その間に彼女は盛り返す。ところが再びスイッチ

入れると、また負け始めるから不思議だ。

 

4回目に見たところでようやく試合は終わった。

うれしいはうれしかったのだが、どこか違和感も残った。

 

 そりゃそうだろう。

 

ハイチ出身の父と日本人の母、3歳で米国に渡り、

フロリダ在住の日米二重国籍保有者だから?

それだけではない。日本語より英語の方が得意だし、

米国を「ホーム」とも呼んでいる。日本のマスコミは

 

「日本人で初めて米豪連続グランドスラムタイトルを

 取った世界ランク1位」

 

の快挙を手放しで報じていた。

 

こうした報道と、ハイチと日本と米国という3つの

文化を代表する大坂選手の実態との間に乖離がある

と感じたからだろう。

 

 筆者の違和感はまだある。

 

全米オープン制覇の際、日本在住一部外国人識者が

日本社会の排外主義、「ハーフ」日本人に対する

差別や偏見を厳しく批判したことだ。

 

彼女は3歳で渡米しているから、日本国内の差別とは

無縁だろう。

こうしたステレオタイプの日本社会批判は時代遅れ

ではないか。

外務省で27年勤務し、台湾、米国、エジプト、

イラク、中国に住んだ皮膚感覚で言えば、この種の

差別や偏見自体は正当化されないが、極めて人間的

であり、程度の差はあれ、世界中どこでも見られる

ものだからだ。

 

 人間は弱い動物であり、自分と異なる個人や集団

には攻撃的になる。それが中東でのユダヤ教徒や

キリスト教徒であり、欧米でのムスリムなのだ。

 

日本に差別がないなどとは言わないが、欧米や中東

ほど恐ろしい迫害や差別は生じていない。

それにもかかわらず、日本だけを取り上げてその

排外主義批判を繰り返すことにも若干違和感を覚える。

 

 日本社会は今急速に変化しており、外国人の増加

により全国、特に地方での変化は尋常ではない。

関係地方自治体では、これらの外国人といかに共存を

図るかにつき、鋭意努力が続けられている。

日本は欧米諸国での失敗の教訓を学びつつ、現在進行

しつつある社会の多人種・多文化化に対応しようと

しているのだ。

 

 それにしても大坂選手は見事に日本を代表していた。

 

あの全豪オープンの表彰式では、自分のことよりも、

まずは対戦相手の努力と健闘をたたえ、戦えて光栄

だったと素直に述べる。その話し方、内容すべてが

彼女の謙虚さ、正直さ、礼儀正しさ、思いやりを

象徴している。これこそ日本人の良さであり、

彼女は英語でしゃべりながらも、こうした日本の美徳

を体現している。

 

それは幼い時期にしかるべき教育を受けたとしか思えない。

 

 彼女に比べれば、従来の自信満々だが自己中心的言動

に終始する世界チャンピオンたちの発言がいかにも陳腐

に思えてくる。大坂選手は単なる世界ランク1位ではなく、

テニス界のすがすがしい新たな風となった。

 

筆者が言っているのではない。

テニス専門誌の米国人記者が大坂選手を評した言葉である。

 

 昨年の全米オープンではS・ウィリアムズ選手が主審の

判断を不服とし、かっとなって暴言を吐いた後にそれを

「性差別に反対する女性の行為」と正当化していた。

両者を比べればどちらが美しいかは一目瞭然だろう。

 

 最後に一つだけ気になることがある。

 

大坂選手は二重国籍、日本の法律では22歳までに

どちらかの国籍を放棄する必要がある。

彼女が米国籍を選べば、日本は全米・全豪を制した

偉大なテニス選手を失うのだろうか。

彼女の去就は図らずも、日本とは何か、日本人とは

何かという重い問題をわれわれ日本人に投げかけて

いるのかもしれない

 

 

 

宮家邦彦(みやけ・くにひこ)

昭和28(1953)年、神奈川県出身。

栄光学園高、東京大学法学部卒。53年外務省入省。

中東1課長、在中国大使館公使、中東アフリカ局参事官

などを歴任し、平成17年退官。

第1次安倍内閣では首相公邸連絡調整官を務めた。

現在、立命館大学客員教授、

キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。

 

 

 

                I.N.O

             (今・・・何を・・・思う・・・)

 

 

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